コラム

FSSC22000にトライ!第二回

世界最高峰の食品安全認証規格
 
FSSC22000にトライ!
 
~キックオフから認証審査まで~



第2回 食品安全マネジメントシステムの構築・運用のための設計図の作成

 

今回は「食品安全マネジメントシステムの構築・運用のための設計図の作成」をテーマに、具体的な取り組みのポイントを説明したいと思います。

 
 
 

FSMS構築・運用設計図を成功させるためのポイント

 

食品安全マネジメントシステム(以下、FSMS)の構築・運用で一番大事なポイントは、何か新しいものを作り上げるわけではないので、まずは自組織の現状をきちんと棚卸して、その上で規格と照らし合わせて足りない部分を補うということです。
この作業を行うには、規格が要求していることを知らなければなりません。ですから、まずは規格をよく読むことです。お経のように、何度も読むのがコツです(笑)。規格は、4章から8章までが要求事項となっているので、4章から読む人が多いのですが、3章の「用語及び定義」をよく読み、定義されている17個の用語をよく理解した上で、4章以降の本文を読まなければなりません。用語を自己流にとらえたまま本文を読むと、規格の意図を正しく理解できなくなります。
おそらく最初は規格が何を言っているのか分からないことがあると思います。規格の文章はなぜ読みづらいのでしょうか。それは、日本語だからです。英語を直訳していますから、読みにくいのです。もし、読んでいて分からない箇所が出てきたら、原文を読んでください。中学生レベルの英語で書かれていますから、日本語よりもよく分かると思います。
規格の勉強の仕方について一言申し上げておきます。規格を勉強する時は、規格を買って読んでください。よく、規格の解釈本を買って読む方がおられますが、規格の解釈は組織がするものです。規格が要求していることを読み取り、自社でどのように対応すべきかを判断してください。その判断は、他人ではなく、自分で判断するのが一番いいのです。コンサルタントや研修講師が、「この規格はこのように解釈すべきです」と押しつけてはいけません。それは余計なお世話です。自分で解釈しようとすると、時間はかかるかもしれませんが、急がば回れです。「ここまでやれば大丈夫です」「こうやれば審査は通ります」なんていうのは方便です。そのように言われると安心するかもしれませんが、そこに保証はありません。逆に、他人の解釈にとらわれると自分たちの活動を狭めてしまいます。
さて、規格がある程度理解できるようになってきたら、今、皆さんが組織でやっておられる仕事のルールは、規格の要求事項のどこに当てはまるのかを見ていきます。私のこれまでの経験から、規格の要求事項の80%くらいは、だいたい日本の食品工場ではすでに実際にやっておられます。ただ、規格の言葉がよく分からないために、やっていないような錯覚に陥っていることがよくあります(図表2)。

既に食品工場では色々な活動を実施している  

トップをやる気にさせるコツ①リスク低減とコスト効率向上

 

私の仕事は、翻訳者のような面があります。組織の方が自分では要求事項に対応していないように思っていても、私の方から「これは、実は要求事項のここに対応しておられるのですよ」と言うと、「ああ、そういうことですか」と納得されることがあります。今はまだ、自分たちのルールが規格要求事項のどこに対応しているのかが、なかなか分からなくても、そこで右往左往されなくても大丈夫です。規格を読んでいるうちに、だんだん分かってきますから。
図表3に、FSMS構築・運用設計図を成功させるためのポイントをまとめてみました。

FSMS構築・運用設計図を成功させるためのポイント

まず、既存のルールを尊重することです。組織に審査に行くと、文書がきれいに整然と揃い過ぎていて「本当にこれらの文書を仕事に使っているのだろうか?」と思ったので、担当者に「ISOに取り組む前はこういう文書はなかったのですか?」と聞くと、「いや、実はあったんですが、ISO審査のために新たに作り直したのです」という答えが返ってくることがあります。ISO審査のためにルールを作ることは止めましょう。
次に、規格要求事項をはじめから作成する必要はないということです。「何かを作る感覚」は必要ありません。よくあるのが、規格要求事項が「4.1」からスタートするので、最初は「4.1」で何かを作ろうとします。何かを作るのではなく、すでにあるルールから引っ張ってくるのです。規格を何回も読んでいると、その意図が分かってきます。意図が分かるということは、今までやってきたルールの中のこの部分に、規格要求事項のここが当てはまるということが分かってきます。
最後に、食品安全マニュアルを作成するなら、きちんと現状を把握してから行うことです。前述したように、規格の意図が分かってくると、現状実施していることが、規格のどこに当てはまるのかを照合し、整理できるようになります。実際の仕事を見ると、目的を理解していれば、既に実施している場合が多いものです。また、整理した決め事は、必ず行うようにします。ただ、たとえ決めた後でも、無理なルールで、できない場合は、すぐにルールを変更しましょう。決めた事にがんじがらめにならないようにします。

 
 
 

現状の活動と規格を照合棚卸作業で80%をクリアする

 
 

では、具体的にどのようにして現状の活動と規格とを照合させていくのかを、私がコンサルティングの時に使っている「食品衛生管理計画の構築状況確認シート」(図表4)で説明しましょう。図表の左側には規格要求事項が書いてあります。ここでは、ISO 22000:2005の「7.3.2 前提条件プログラム(PRP)」、ISO/TS22002-1の「4.1-18.1」、総合衛生管理製造過程の「一般的衛生管理プログラム(PP)」を取り上げています。一方、図表の右側には、食品安全管理の内容として、「文書名」「記録名」「文書や記録はないが活動している」「検証方法の内容」の4項目を設置しています。組織はまず、この右側に、自分たちが現在使っている文書や記録類、あるいはそのどちらもないけれども活動している内容、そしてその検証方法を書いていきます。それから、それらが左側の規格要求事項のどこに照合するのかを見ていきます。これが冒頭に申し上げた棚卸作業です。これでだいたいの食品工場は、規格要求事項の80%はすでにできていることが分かりますから、そうすると、残り20%の仕組みを新たに構築することになります。このやり方ですと、新たにムダなものを作ってしまうことはありません。
このような棚卸作業は、工場内で食品安全管理に取り組むためのチームを編成していただき、そのメンバーの方々で実施するのがいいと思います。そのメンバーは、工場の中でその分野に一番詳しい方がピックアップされるべきです。例えば、品質に詳しい人、原料に詳しい人、製造に詳しい人、設備に詳しい人などをメンバーに選定します。別に幹部クラスや部課長クラスでなくても構いません。その実務に最も詳しい人であることが重要です。そういう方々にチェックしてもらいながら図表4のようなチェックシートを作ると、一番的を射た内容になると思います。

食品衛生管理計画の構築状況確認シート 食品衛生管理計画の構築状況確認シート

「ISOって文書化が大変ですよね」とよく言われますが、それはおそらくムダな文書を作っているから大変なのです。ISO22000の要求している文書は、全部で18種類しかありません(図表5)。記録は25種類です。全部足しても43種類です。文書化が大変なのは、この最低不可欠の43種類以外に、さらにプラスアルファの文書・記録を作っておられるからではないでしょうか。参考までに文書レビューチェックリストを図表6に示しておきます。新たに作る仕組みは20%と言いましたが、すでにISO 9001の認証をとっておられる組織であれば、もっとその割合は少なくなるでしょう。一方、HACCPだけをやっている組織で、PDCAを回す仕組みがない場合は、新たに作る仕組みは50%くらいまで増えるかもしれません。FSMS構築を設計するに当たっては、どれくらい時間をかけて構築するのか、その期間を決める必要があります。一般的には、3〜4ヵ月くらいで集中的に取り組んだほうがいいと思います。
規格の章で言うなら、4章、5章、6章というのはFSMS全体に共通する要求事項です。7章はタイトルが「安全な製品の計画及び実現」となっていますから、PDCAのPとDに相当します。8章はタイトルが「食品安全マネジメントシステムの妥当性確認、検証及び改善」となっていますから、PDCAのCとAに相当します。
日本人はまじめですから、パーフェクトを狙って、Pのところを緻密にしようとしますが、計画がうまくいくかどうかは実際にやってみないと分かりません。ですから、最初の設計には3〜4ヵ月かければ十分です。一方、運用には、少なくとも3ヵ月以上、できれば半年くらいをかけてください。運用期間があまりに短いと、運用データの母集団が小さすぎて十分にチェックできないと思います。このあと、内部監査やマネジメントレビューを経て、不十分な点や抜けなどを改善した後は、審査を受ける運びとなります。取り組みをスタートしてから審査まで、通常は1年くらいをみておけばいいと思います。

ISO 22000で要求されている18の文書 文書レビューチェックリスト




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