HACCPとは
食品衛生管理を保つ方法として、従来からHACCP(ハザード分析および重要管理点)の手法が多く使われます。まずは、あらためてHACCP とは、どのようなものか を説明します。(1) HACCPの沿革
HACCP は、1959 年~1960 年代、米国のビルズベリー社が宇宙食の安全確保のために構築しました。アポロが月をめざしていた時代のことです。宇宙に持っていく食料すべての検査を行おうとしても、それは不可能なことでした。なぜなら、検査で開封してしまうからです。だからといって、代表的な品物をサンプル検査しても、すべてが絶対に安全であることを保証することはできなかったのです。
そこで開発されたのが、HACCP システムです。日本語では、「ハセップ」「ハサップ」「ハシップ」などと発音されています。
つぎに、その内容について説明します。
(2) HACCPシステムの3つのポイント
HACCP システムの内容を、もう少し具体的に説明すると、つぎの3点に要約できます。●危害発生の原因となるハザードを予防するシステムであり、ハザードが発生した後に対応するためのものではなく、生物学的、化学的、物理的なハザードの発生を防ぐために自工場を正確に診断する道具である。
●ハザードの発生をゼロにするシステムではない。しかし、食品の安全性を侵す可能性のあるハザードの発生を最小限にするために設計されたものである。
●従来のように最終製品の検査に依存するのではなく、安全性の確認から工程管理、特にCCP(重要管理点)の管理状況のチェックに集中することである。
(3) 従来方式との違い
従来の管理方法は、図のように最終製品の検査に重点をおいた衛生管理方法です。
それに対してHACCPシステム は、ハザード分析(HA:Hazard Analysis)とCCP(Critical Control Point:重要管理点)の監視からなる食品衛生の管理手法となっています。
原材料から製造・加工、最終製品の保管・流通にいたるすべての工程で、発生するおそれのあるハザード(危害が発生する要因)を明確にし、ハザードを制御することにより製品の安全確保を図るという、ハザード発生の予防に力点をおいた衛生管理の手法です。
具体的には、私たち自らが、食品の原材料の生産から、製品の製造・加工・流通・消費にいたるすべての工程で発生するおそれのあるハザードの原因物質を特定し、これらのハザードの起こりやすさ、起こった場合の被害の程度などを含めて評価し、その防止措置を明らかにします。これがハザード分析(HA)です。
また、この分析結果に基づきハザードを制御するため、重点的に管理すべき工程(CCP)を定め、このポイントを管理するための限界値(許容限界= CL:Critical Limit)を決め、管理状況を集中的かつ常時モニタリングします。そして、管理基準の逸脱が認められれば速やかに改善措置を講じ、これらの管理内容をすべて記録に残すとともに、定期的にシステムの有効性を見直すことにより、
安全性が保証されない製品が流通過程へ入ることを未然に防止する手法です。
では、HACCPシステムを導入すると、どのようなメリットが得られるか。
1.自工場で製造する食品の安全性がより一層向上する。
2.企業の社会的な信頼が高まる。HACCPを取り入れているということだけで評価が違う。
3.このシステムにおける衛生管理に含まれるモニタリングやその記録保管は、製造者自らの製造物に対する責任に関し立証できることになる。
4.行政庁(保健所など)による監視・指導・消費者からのクレームなどにも適切な対応がしやすくなる。
ハザード分析の注意点
そこで、ハザード分析の注意点は、つぎのようになります。1.ISO22000:2018箇条8に沿ってハザード分析を実施すると、次の項目が含まれていることを認識しておく必要があります。
・ハザードの特定(ISO22000:2018の8.5.2.2)
・許容水準の決定(ISO22000:2018の8.5.2.2)
・ハザードの評価(ISO22000:2018の8.5.2.3)
・重要な食品安全ハザードの特定(ISO22000:2018の8.5.2.3)
①ハザード分析の最終目標は、最終製品を摂取したときに食品衛生上のハザードが発生する可能性のある原材料や工程を特定して、それらを管理することですから対象となる「重要な食品安全ハザードの特定」をしてから、その上でCCP(重要管理点)を決定し、適切な許容限界(CL)、モニタリング方法、改善措置(修正や是正処置)を設定するための情報を収集する目的があります。
②運用(製造)するなかで新たなハザードを見いだすことがあり、このときにも新たな分析をする必要があります。
③ハザードやそれを制御する処置や活動である管理手段を記載したリストを作成することです。管理手段とは、各ハザードに対し許容できる水準まで低減する、または除去するなどの管理方法です。
HACCPの7原則・12手順で現場管理を行うことが重要です。
そのためには正しい方法で進めることです。
HACCPの正しい手順が、12の手順にしたがって構築・運用することです。手順1〜5は、手順6ハザード分析(原則1)のための準備段階です。ここでは、実際に1〜5の順にしたがって、具体的な作業上のポイントや注意事項について説明しましょう。
ハザード分析のための前段階(HACCPシステムの計画を作成する準備段階)
適切な衛生管理を行い食品の安全を保証するためには,食品企業としてその目的意識と推進意欲を明確にしなければなりません。近年、経営トップの指示・無関心による不適正な表示、産地偽装などが多発しており、再発防止が強く求められています。そのためにはまず、経営トップのHACCP システム導入への明確な意思決定と決断力がもっとも重要なことは言うまでもありません。企業方針として導入を決定してからは,HACCP システムに基づいた衛生管理の計画書であるHACCPシステム計画を作成します。この計画による衛生管理を適正に実施していくために、組織全体の目的遂行意識の維持と知識レベルの維持・向上が不可欠になります。このため、HACCP チームメンバーをはじめ、現場作業員も含めた教育・訓練について、組織的、計画的、段階的に準備を進める必要があります。
HACCPシステム計画作成の準備として、下記のような手順を踏む必要があります。
ISO22000:2018の規格と関連性を保っています。
【コラム】
参考までにHACCPとISO9001(品質マネジメントシステム)との違いについてHACCPは、工程で発生する恐れのある危害を予測し、その危害を制御するシステムです。それに対して、ISO9001は、製造・加工の工程全般を適正に維持管理するシステムです。
ISO9001には、工程管理、検査・試験、品質記録の管理、内部品質監査、教育・訓練及び購買などの規格(要求事項)が定められていて、その運用に当たっては、運用の為の組織を明確にするとともに、これらの規格に従って品質管理活動全般を体系的に文書化し適正な活動レベルを維持管理することが求められています。従って、HACCPとISO9001は、その目的が異なるにしても適正な工程管理により製品の品質を保証する側面において共通点があります。
ハザード分析および重要管理点(HACCP)システム
第1節:適用
1.1 HACCPチームの編成および適用範囲の特定(手順1)
① 食品事業者は効果的なHACCPシステムを作成するために必要な適切な知識および専門性があることを保証すること。
② 種々の専門家、例えば製造、原材料の購買、機械器具のメンテナンス、品質保証、洗浄殺菌といった異なる活動の責任者からなる多分野の専門家から構成されるチームを編成すること。
③ HACCPチームはHACCPプランを作成し、それをすべての従業員に説明し役割に応じたトレーニングを実施さらに見直しを行い必要に応じてプランを更新する責任がある。
④ 施設の中に専門性を持った従業員がいない場合には専門的アドバイスを他の情報源から得ることができる。例えば業界団体、個別の(独立した)専門家、コンサルタント、規制機関等からである。
⑤ HACCPに関する文献や業界団体が作成したHACCPの指針等も参考にできる。また、十分に教育訓練を受けた従業員がそのような指針を読んで理解することによりHACCPシステムを施設の中で作成し実施することができる。
⑥ 外部の専門家によって作成された一般的なHACCPプランを食品事業者は使用することができるが、その場合には自らの施設の製造や工程と一致しているかどうかを確認する必要がある。
⑦ HACCPチームはHACCPシステムおよび適切なPRPの適用範囲を特定する。適用範囲の中ではどういった製品や工程がHACCPプランの対象とするかを記述すること。
1.2 製品の記述(手順2)
① 完全な製品の記述(組成(すなわち材料)、物理/化学的特性(例、水分活性、pH、保存料、アレルゲン)、加工方法/技術(加熱、冷凍、乾燥、漬込み、燻煙等)、包装、消費期限/賞味期限、保管条件および流通方法)等関連する安全に関する情報を含む)を作成する。
② 複数の製品を製造している施設においては類似の特性および加工工程によりHACCPプラン作成の目的のために食品をグループ化することが効果的なこともある。
③ すでに設定している食品中のハザードの限界値はHACCPプランのために検討し、考慮に入れる(例えば、食品添加物の限界値、規制上の微生物規格、動物用医薬品の最大残留許容基準、および規制機関が設定した加熱処理の温度と時間)。
1.3 意図される用途および使用者の特定(手順3)
① 食品事業者が意図する使用法ならびにフードチェーンの次の食品事業者または消費者による予想される使用法を記述する。
② 記述は外部の情報によって影響されることもある(例えば、規制機関またはその他の情報源から、消費者が製品を食品事業者が意図した以外の方法で使用しているという情報)。
③ 特定のケース(例、病院)では感受性集団を対象とした食品か検討する必要がある。感受性集団のための食品の場合、食品が安全であることを高い水準で保証するためには、工程管理の強化、モニタリング頻度を上げる、製品検査でコントロールの効果を検証する、または、その他の活動が必要になることもある。
1.4 フローダイアグラムの作成(手順4)
① 特定の製品の製造の、再加工を含むすべての工程を含むフローダイアグラムを作成する。同様の加工工程を用いて製造される製品群に対し、同一のフローダイアグラムを使用できることもある。
② フローダイアグラムは材料、食品に接触する素材、水や空気(もし適切な場合)等、すべての情報を記載すべきである。複雑な製造工程の場合には、管理できる小さなモジュールに分割したり複数のフローダイアグラムをリンクさせたりして作成することもできる。
③ フローダイアグラムはハザード分析を実施する際に、ハザードが発生、増大、減少または混入する可能性を評価する基礎として使用する。フローダイアグラムは明確で、正確で、かつハザード分析を実施するのに十分に詳細であるべきである。
フローダイアグラムは以下を含むべきだが、これに限らない。
① 製造加工の操作順、相互の関係
② 原材料、材料、加工助剤、包装資材、ユーティリティ(諸設備)および中間製品がフローに入る箇所
③ 外部委託(アウトソース)している工程
④ 再加工および再利用が行われる場所
⑤ 最終製品、中間製品、廃棄物および副産物が出荷または搬出される場所
1.5 フローダイアグラムの現場確認(手順5)
① 現場のすべての工程をいろいろな作業時間帯において観察しフローダイアグラムと作業が一致しているか確認する。
② 異なっている場合には、フローダイアグラムを修正する。このフローダイアグラムの確認は製造加工工程の作業に十分な知識を有する者が行うべきである。
1.6 各工程に関連して発生する可能性のすべての潜在的ハザードをリスト化し重要なハザードを特定するためのハザード分析を行い、特定されたハザードを管理する手段を検討する(手順6/原則1)
① ハザード分析は可能性のあるハザードの特定および特定の食品事業の作業において、どれが重要なハザードであるかを評価することからなる。
② HACCPチームは、すべての可能性のあるハザードを列挙する。
③ HACCP チームは食品事業者の適用範囲に従って、各々の工程で、これらのハザードが合理的に発生する可能性があるか検討する。
④ ハザードは具体的にすべきである。例えば、金属片だけではなくて、粉砕で壊れた刃に由来する金属異物の混入のように汚染源や存在する理由も記述する。
⑤ ハザード分析は複雑な製造作業を分類すること、および手順4で記述した複数のフローダイアグラムの工程を分析することにより単純化できる。
⑥ HACCPチームは次に、これらのハザードのうち、その予防、除去または許容レベルまでの低減が安全な食品のために必須なハザードはどれか特定するために評価する(すなわち、HACCPプランで取り組むべき重要なハザードを決定する)。
重要なハザードを決定するためにハザード分析を実施する際、可能な限り以下を検討する。
① 材料および工程を含む製造加工する食品の種類に関連するハザード(例えば、フードチェーンにおけるハザードの調査またはサンプリングおよび検査、回収、科学的文献情報または疫学的データから)
② PRPを考慮に入れて追加のコントロールがない状態での、ハザードの発生の起こりやすさ
③ コントロールがない状態で、食品中のハザードによる健康への悪影響の発生頻度と重篤性
④ 特定された、食品中のハザードの許容レベル(例えば、規則、意図する使用法および科学的情報に基づく)
⑤ 食品を製造している施設および機械器具の性質
⑥ 病原体の生残または増殖
⑦ 食品中での毒素(例、カビ毒)、化学物質(例、農薬、動物用医薬品、アレルゲン)または物理的ハザード(例、ガラス、金属)の生成または持続性
⑧ 意図した用途および/または消費者による製品の誤った取扱いにより、食品が安全ではなくなる可能性
ハザード分析においては、重要なハザードを決定する際、意図した用途だけはなく、知り得る意図していない使用法も検討すべきである(例えば、スープミックスは水で溶解後、加熱調理してお召し上がりくださいと表示しても、チップスの味付け用ディップとして加熱しないでよく使用されるとわかっている場合)。
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理においては、食品事業者は単純化されたハザード分析を行うことも許容され得る。この単純化されたプロセスでは、懸念される特定のハザードを特定するため複雑なハザード分析を行う代わりに、これらのハザードの発生源をコントロールするためグループ化(生物的、物理的、化学的)することも可能である。しかし、このようなアプローチには欠点もある。例えば生物的ハザードという同一のグループ内でもコントロールは異なることもある。例えば、芽胞を形成する病原菌に対して芽胞を形成しない病原菌がある。外部の情報源(業界団体、規制機関)から提供される一般的なHACCPに基づくツールや指針はこの手順を支援するためにデザインされグループ内のハザードに必要とされる異なるコントロールに関する懸念を取り除くために作成されている。
予防、除去または許容レベルまでの低減が安全な食品の生産に必須なハザード(なぜなら、それらはコントロールがない状態では合理的に起こりそうで、かつ、もし存在した場合、かなり疾病または傷害が起こりそうだから)を特定し、そのハザードを予防、除去または許容レベルまで低減させるために設計された手段でコントロールすべきである。場合によっては、これはGHPの適用で達成されることもあるし、そのうちいくつかは特定のハザードをターゲットにする。(例えば、リステリア・モノサイトゲネスによるRTE食品の汚染をコントロールするための機械器具の洗浄、食品アレルゲンのある食品からそのアレルゲンを含まない他の食品への移行を防ぐ)。別の例では、管理手段は製造工程中でCCPとして適用する必要がある。
管理手段が存在する場合には各々の重要なハザードに対し、どの管理手段を適用するか検討すべきである。1つの重要なハザードをコントロールするのに、複数の管理手段が必要なこともある。例えば、リステリア・モノサイトゲネスをコントロールするため、食品中の生菌を殺す加熱処理が必要で、さらに加熱後の加工環境からの汚染を防ぐため環境の洗浄消毒が必要になるかもしれない。
特定の管理手段により、複数のハザードをコントロールできることもある。例えば、食品中にサルモネラ属菌および大腸菌O157:H7が存在する場合、加熱処理により、両方のハザードをコントロールすることができる。
1.7 重要管理点(CCP)の決定(手順7/原則2)
●食品事業者は、手順6の原則1でリストアップした管理手段のうちCCPとなり得る管理手段を検討する。CCPは、ハザード分析の結果として重要なハザードとして特定されたハザードに対してのみ決定する。CCPはコントロールが必須で、逸脱により安全でない可能性のある食品の製造につながる工程に設定される。CCPにおける管理手段はハザードがコントロールされ、結果として許容レベル内に収まる。同じハザードをコントロールするのに、複数の工程にCCPが必要になることもある(例えば、加熱工程は芽胞形成病原菌の栄養細胞を殺すためのCCPとなり、冷却工程も芽胞の発芽と増殖を防ぐためにCCPとなり得る)。同様にCCPは1つ以上のハザードをコントロールし得る(例えば、加熱はいくつかの芽胞非形成の病原微生物をコントロールできる)。管理手段が適用される工程がHACCPシステムにおいてCCPか否かを決定するには、決定樹(decision tree, DT)を用いることでできる。DTは生産、と畜、加工、保管、流通、その他のプロセスで使用するためのものであるかどうかを考慮して、柔軟に対応する必要がある。ほかのアプローチは専門家の意見を用いることもある。
●CCPを特定するため、DTまたはその他のアプローチを用いるか決めるとき、以下のことを検討すべきである。
●分析している工程において管理手段を用いることができるか評価する。
この工程において管理手段が用いることができない場合、この工程はその重要なハザードのためのCCPと考えるべきではない。
●分析している工程において管理手段を用いることができるが、工程の後の段階でも適用できる場合、または、他の工程において当該ハザードに対する他の管理手段がある場合、分析している工程は CCP として考えるべきではない。
●ある工程の管理手段が同じハザードをコントロールするため、他の工程の管理手段と組み合わせで用いられているかを判断する。その場合、両方の工程はCCPとして考えるべきである。
●特定されたCCPは、表形式で要約できる、同様に、フローダイアグラムの適切な工程で強調される。もし、特定された重要なハザードに対する管理手段がどの工程にも存在しない場合、製品または製造工程を修正すべきである。
1.8 各CCPに妥当性確認された管理基準(CL)の設定(手順8/原則3)
●CLはCCPが管理されているかを判断するために設定する。また、そうすることで、許容できる製品と許容できない製品を区分けすることができる。これらのCLは測定可能か、観測可能であるべきである。ケースによっては特定の工程において設定されたCLが1つ以上のパラメータを有することもある(例えば、加熱処理は通常、温度と時間のCLを含む)。CLは通常、管理手段に関連した極めて重要なパラメータの最小または最大値
●(温度、水分量、時間、pH、Aw、有効塩素、接触時間、コンベアベルトのスピード(速度)、粘度、伝導度、流量等の測定値または、場合によってはポンプの設定の観察等)が用いられることが多い。CLからの逸脱は安全ではない食品が生産された可能性があることを示唆する。
●各々のCCPの管理手段のためのCLは特定され、適切に実施された場合にハザードを許容されるレベルまでコントロールすることができるという証拠により科学的に妥当性が確認されるべきである。CLの妥当性確認は研究を行うことも含まれる(例、微生物の不活化試験)。食品事業者は必ずしも自身でCLの妥当性確認を行うため研究を行う必要はない。CLは既存の文献、規則または規制機関からの指針、または第三者が実施した研究(例えば、装置メーカーが、ナッツ類のドライロースト(木の実の乾煎り)に適切な加熱時間、温度および厚さを決定するために行った研究)に基づくこともできる。
1.9 各CCPのためのモニタリングシステムの設定(手順9/原則4)
●CCPのモニタリングはCCPにおいて、CLと比較するスケジュールに基づく測定または観察である。モニタリング手順はCCPにおいて、逸脱を検出できるべきである。さらに、モニタリング方法および頻度は、製品の適時な隔離および評価を可能とするため、CLからの逸脱を適時に検出する能力があるべきである。可能であれば、モニタリング結果がCCPにおいて、逸脱に向かう傾向を示唆しているときに、工程の調整を行うべきである。この調整は逸脱が起きる前に行うべきである。
●CCPのためのモニタリング手順は影響を受けた製品を隔離できるようにCLからの逸脱を適時に検出する能力を有すべきである。モニタリング方法および頻度は逸脱の性質を考慮に入れる(例えば、温度の低下またはふるいの破壊、低温殺菌中の急な温度低下、または冷蔵保管中の温度の漸増)。可能であれば、CCPのモニタリングは連続的であるべきである。加工の温度と時間のような測定できるCLのモニタリングはしばしば連続的にモニタリングできる。水分量、保存料の濃度のような測定可能なCLは連続的にモニタリングすることはできない。ポンプの設定や適切なアレルゲン情報が記載された正しい表示ラベルの貼付のような観察によるCLは、連続的にモニタリングされることは稀である。もし、モニタリングが連続的ではない場合、モニタリングの頻度は十分で、可能な限りCLに適合していることが確認でき、逸脱によって影響を受ける製品の量を最小限にするのに十分でなければならない。物理的および化学的測定が微生物検査よりも通常は好まれる。それは、物理的および化学的測定は迅速に行え、製品および/または工程に関連する微生物ハザードのコントロールをしばしば示すからである。
●モニタリングを行う者はモニタリングが措置をとる必要を示唆したとき、とるべき適切な段取りについて、指示を受けているべきである。モニタリングから得られたデータは、改善措置を行うため、知識と権限を有する指名された者によって評価されるべきである。CCPモニタリングに関係するすべての記録および文書にはモニタリングを行った者が署名またはイニシャルを記入し、結果および行った活動の時刻が報告されるべきである。
1.10 改善措置の設定(手順10/原則5)
●HACCPシステムの中の各CCPに、逸脱が起きたときに効果的に対応するため、特定の文書化された改善措置を作成すべきである。CCPにおいて連続的なモニター中に逸脱が起きたとき、逸脱が起きた間に製造されていた製品は安全でない可能性がある。CLを満たすことができない逸脱が起きたとき、かつモニタリングが連続的ではないとき、食品事業者は逸脱で影響を受けたかもしれない製品を決定すべきである。
●逸脱が起きたときにとるべき改善措置は、CCPを管理下に戻し、かつ安全でない可能性のある食品を適切に取り扱い、消費者に届かないことを保証すべきである。とるべき措置には影響を受けた製品を隔離すること、および適切な処分を確実にするため、その安全性を分析することが含まれる。
●逸脱が起きたときに、製品の安全な使用に関して評価を行うために外部の専門家が必要な場合もある。製品を再加工(例、低温殺菌)できると判断されることも、または他の用途に転用されることもある。他の状況では、製品は廃棄が必要なこともある(例えば、黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンで汚染された製品)。
●逸脱が再発する可能性を最小限に抑えるために、可能な場合は原因分析を行って、逸脱の原因を特定し、修正する必要がある。原因分析は、逸脱の理由を特定すること、または逸脱により影響を受けた製品の量を限定的または拡大することになる。
●逸脱原因の究明および製品の処分の手順を含む改善措置の詳細はHACCPの記録として文書にすべきである。傾向を特定し、改善措置が効果的であることを確認するため、改善措置記録の定期的な見直しを行うべきである。
1.11 HACCPプランの妥当性確認および検証手順(手順11/原則6)
●HACCPプランが実施される前に、妥当性確認が必要である。これは次の要素を合わせて、食品事業にとって適切な重要なハザードをコントロールする能力があることを保証することである:ハザードの特定、CCP、CL、管理手段、CCPモニタリングの頻度と種類、改善措置、検証の頻度および種類ならびに記録すべき情報の種類。
●管理手段およびそのCLの妥当性確認は、HACCPプランの作成中に行われる。妥当性確認は科学的文献の見直し、数学的モデルの使用、妥当性確認研究の実施および/または権威ある情報源が作成した指針を使用することが含まれる。
●CLを設定するのにHACCPチームではなく、外部の専門家が作成したHACCP指針を使用する場合、検討中の作業工程、製品または製品群にそのCLが適用できるか注意が必要である。
●HACCPシステムの最初の実施の期間および検証手順が設定された後、製造条件下で製造中に、一貫性をもってコントロールが達成できたことを実証する証拠を入手すべきである。
●食品安全に影響を与える可能性のある、いかなる変更もHACCPシステムの見直しが必要で、かつ必要なときにはHACCPプランの再妥当性確認が必要である。
●HACCPシステムが実施された後、HACCPシステムが効果的に機能していることを確認する手順を設定すべきである。これらには、HACCPプランに従って、ハザードのコントロールが継続的に行われていることの検証、管理手段がハザードを意図したとおりに効果的にコントロールしていることを示す手順およびHACCPシステムの適切さを定期的に、また変更が起きたときに見直しする手順が含まれる。
●検証活動はHACCPシステムが意図したとおりに機能していることおよび効果的に運用され続けていることを保証するため、継続的に実施すべきである。
●検証には内部および外部監査、校正、サンプリングおよび検査、ならびに記録の見直しが含まれ、HACCPシステムが正確に計画したとおりに機能しているか決定するために用いることができる。
検証活動の例には以下のようなものがある。
■CCPがコントロール下にあり続けることを確認するためのモニタリング記録の見直し
■改善措置の記録の見直し(特定の逸脱、製品の廃棄等処分、逸脱の根本原因を決めるため解析を含む。)
■モニタリングおよび/または検証に用いる測定機器の校正または正確さの点検
■HACCPプランに従って管理手段が運用されているという観察
■製品の安全性を検証するためのサンプリングおよび検査、例えば、微生物(病原体または指標菌)、マイコトキシン等の化学的ハザード、金属片等の物理的ハザード;
■微生物汚染およびリステリア属菌のような指標菌のための環境サンプリングおよび検査
■ハザード分析およびHACCPプランを含む HACCPシステムの見直し(例えば、内部監査および/または第三者監査)
●検証は、モニタリングおよび改善措置を行う者以外の者が行うべきである。ある種の検証活動が施設内でできない場合、施設の代わりに外部の専門家または能力のある第三者機関が行うべきである。
●検証活動の頻度はHACCPシステムが効果的に機能していることを確認するのに十分なものであるべきである。管理手段の実施の検証はHACCPプランが適切に実施されていることを決定するのに十分な頻度で行うべきである。
●検証は、HACCPシステムのすべての要素の有効性を確認するため、定期的、または変更が起きたとき、HACCPシステムの包括的な見直し(例、監査や再解析)が含まれるべきである。このHACCPシステムの見直しは、適切な重要なハザードが特定され、管理手段およびCLはハザードをコントロールするのに適切であり、そしてモニタリング、検証活動はプランに基づき行われているか、そして、逸脱を特定できるか、さらに、起きた逸脱に対し改善措置は適切か確認すべきえある。この見直しは食品事業者内部または外部の専門家によって行われる。見直しはいろいろな検証活動が意図された通り遂行されているかを確認すべきである。
1.12文書化および記録方法の設定(手順12/原則7)
●効率的で、かつ正確な記録(記録付け)はHACCPシステムの適用において必須である。HACCPの手順は文書化すべきである。文書化および記録方法は作業の性質および規模に照らし合わせて適切なもので、また食品事業者が、HACCPコントロールが実施され、維持されていることを検証するのに十分であるべきである。外部の専門家が作成したHACCP指針(例、業界分野に特異的なHACCP手引書)は文書の一部として使用できることもある。ただし、それらの文書が食品事業者の食品製造を反映している場合に限り、文書の一部として利用することができる。
文書の例は以下を含む。
■HACCPチームメンバー表と役割分担
●ハザード分析およびプランにハザードを含むか外すかの判断を科学的に支援する文書
■CCPの決定
■管理基準の決定および基準設定を科学的に支援する情報;
■管理手段の妥当性確認
■HACCPプランの改訂記録
記録には以下を含む。
■CCPモニタリングの活動
■逸脱および関連した改善措置
■実施した検証手順
■シンプル(単純な)な記録の仕方は、効果的で、また従業員に容易に情報を伝えることができる。既存の製造作業と統合したり、配達のインボイス(納品書)や製品の温度を記録するチェックリストのような既存のペーパーワーク(事務処理)を使用したりすることもできる。また、適切な場合には、記録は電子的にも維持できる。
1.13トレーニング
●食品事業者の従業員、政府および大学関係者に対するHACCP原則およびその適用に関するトレーニングはHACCPの効果的な実施にとって必須の要素である。HACCPプランをサポート(支援)する具体的なトレーニングの素材として、各CCPの責任を有する作業者の職務を明示した作業の指示および手順を作成すべきである。トレーニングプログラムは、トレーニングを受ける担当者の知識と技術のレベルに適したレベルの概念に対処するように設計する必要がある。トレーニングプログラムは定期的に見直し、必要に応じて更新すべきである。逸脱によっては、改善措置の一部として再トレーニングが必要なこともある。
●食品事業者、業界団体、消費者団体および規制機関の間の協力は極めて重要である。継続的な対話を推奨し、また維持するとともに、HACCPの適用を理解する風土を醸成するため、食品事業者と規制機関による合同トレーニングの機会を提供すべきである。
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