食品安全基礎用語解説

HACCPとは

HACCPとは

 HACCPシステムとは

次の3点に要約できる。


1.ハザードの発生を予防するシステムであり、ハザードが発生した後に対応するためのものではなく、生物学的、化学的、物理的なハザードの発生を防ぐための道具である。

 

2.ハザードの発生をゼロにするシステムではないが、食品の安全性を侵す可能性のあるハザードの発生を最小限にするために設計されたものである。

 

3.従来の最終製品の検査に依存し、安全性の確認から工程管理、特に重要管理点の管理状況のチェックに集中することである。

 

もう少し具体的に表現すると、次のようになります。

 

 HA(ハザードの分析)CCP(重要管理点の)監視からなる食品衛生管理手法

 従来の管理方法は、最終製品の検査に重点を置いた衛生管理方法

原材料から製造・加工の工程を経て、最終製品の保管・流通に至る全ての工程において、発生する恐れのあるハザードを予測し、これらのハザードを制御することにより製品の安全確保を図るというハザード発生の予防に力点を置いた衛生管理手法である。

 具体的には、我々自らが、食品の原材料の生産から、製品の製造・加工・流通・消費に至る全ての工程で発生する恐れのあるハザードの原因物質を特定し、これらのハザードの起こりやすさ、起こった場合の被害の程度などを含めて評価しその防止措置を明らかにし(HA)さらにこの分析結果に基づき危害を制御するため重点的に管理すべき工程(CCP)を定め、このポイントを管理するための限界(許容限界=CL)を決め、管理状況を集中的かつ常時モニタリングし、もし管理基準の逸脱が認められれば速やかに改善措置を講じ、さらにこれらの管理内容を全て記録に残すとともに、定期的にシステムの有効性を見直すことにより、安全性が保証されない製品が流通過程へ入ることを未然に防止する手法である。

 

HACCPシステムの特徴

では、HACCPシステムを導入すると、どのようなメリットが得られるか。

 

1.食品の安全性がより一層向上する。

2.企業の社会的な信頼が高まる。HACCPを取り入れているということだけで評価が違う。

3.このシステムにおける衛生管理に含まれるモニタリングやその記録保管は、製造者自らの製造物に対する責任に関し立証できることになる。

4.行政庁(保健所など)による監視・指導・消費者からのクレームなどにも適切な対応ができる。

 

 参考までにHACCPとISO9001との違いについて

 HACCPは、工程で発生する恐れのある危害を予測し、その危害を制御するシステムである。それに対して、ISO9001は、製造・加工の工程全般を適正に維持管理するシステム。

 ISO9001には、工程管理、検査・試験、品質記録の管理、内部品質監査、教育・訓練及び購買などの規格(要求事項)が定められていて、その運用に当たっては、運用の為の組織を明確にするとともに、これらの規格に従って品質管理活動全般を体系的に文書化し適正な活動レベルを維持管理することが求められている。

 従って、HACCPとISO9001は、その目的が異なるにしても適正な工程管理により製品の品質を保証する側面において共通点がある。

12の手順に従って構築運用してみます。

それでは,実際に12の手順に従って,具体的な作業上のポイントや注意事項について説明しましょう。

1.危害分析のための前段階(HACCPプラン作成の準備段階)

適切な衛生管理を行い保証するためには,食品企業としてその目的意識と推進意欲を明確にしなければなりません。また,近年,経営トップの指示,無関心による不適正な表示,産地偽装などが多発しており,再発防止が強く求められています。そのためにはまず,経営トップのHACCPシステム導入への明確な意思決定と決断力が最も重要なことはいうまでもありません。

企業方針として導入を決定してからは,HACCPシステムに基づいた衛生管理の計画書であるHACCPプランを作成し,プランによる衛生管理を適正に実施していくために,組織全体の目的遂行意識の維持と知識レベルの維持向上が不可欠になります。このため,HACCPチームメンバーをはじめ,現場作業員も含めた教育訓練について,組織的,計画的,段階的に準備をすすめる必要があります。

HACCPプラン作成の準備段階は、下記の通りです。

手順1 HACCPチームの編成

手順2 製品の記述

手順3 意図する用途および対象となる消費者の確認

手順4 フロ-ダイアグラム(製造加工工程一覧図)の作成

手順5 フロ-ダイアグラムの現場での確認

1)HACCPチ-ムの編成[手順1]

第一歩は,HACCPチームの編成です。このチームがHACCPプラン作成とプランによる生管理実施上の中心的役割を果すことになります。

HACCPチームは,発言権と実行力のある施設の最高責任者(工場長)等をリーダーとして,製造部門の責任者,施設・設備や製造に用いる機械器具の工務(エンジニアリング)関係の保守担当の責任者,品質管理担当の責任者等を構成員とします。ただし,施設規模によっては各種業務を兼任している場合が多く,そのために経営者自らがチームリーダーとなることもありえます。いずれにせよ,リーダーは,HACCPシステム全体をよく理解していなければなりません。

要は,一人だけで取り組まないことです。可能な範囲で社内の協力体制を確保するように努めましょう。外部の専門家の助言を得ることも賢明なことです。また,食品衛生の試験業務については,自社で実施できない場合は外部に依頼することも検討してみるべきです。

HACCPチームは,まず最初の仕事として,その施設内で製造加工している製品について,それらの特徴,作業工程,施設の図面,機械器具の仕様書,作業手順書などすべてのデータや情報を集め,それらを整理しながらプラン作成準備のための以下のような作業を開始します。

 

2)製品の記述(対象食品の明確化)[手順2]

衛生管理を行うに当って,まずどんな食品が対象になるのかを明確にしておかなければなりません。すなわち,管理対象がわからないと,それに対する的確な対応策が考えられないということです。そのために,最終製品について,さまざまな項目に分けて仕様や特性を記述します。一般的には,次の手順3(用途と対象者)も合わせて「製品説明書」としてひとつの表にしています。

具体的には,最終製品について,製品の名称および種類,製品の特性,原材料の名称,添加物の名称,包装の形態,単位と量,容器包装の材質,消費期限あるいは賞味期限と保存の方法,製品における危害管理のための社内目標(必要に応じて法的規格も),喫食や利用の方法,対象となる消費者を記載します。アレルギー物質を含む場合は,そのことも記載します。なお,原材料には,水と氷,加工助剤,板(かまぼこであれば),充填用窒素ガス等使用するすべての物品をリストアップし,後で危害要因の検討を

行うことが必要です。

HACCPチームの役割

・HACCPプランの作成

・一般的衛生管理プログラムの実施手順を具体的に文書化した手順書の作成

・作業者に対するHACCPプランに関する教育訓練

・検証の実施と外部査察への対応

・HACCPプランと一般的衛生管理プログラムの見直し,修正または変更

3)意図する用途および対象となる消費者の確認[手順3]

危害要因の発生する可能性を検討するためには,製品が,だれに,どのように使用されるのかを明確にしなければなりません。

消費者が製品をそのまま使用するのか,他の製品の原材料としてさらに加工されるのか,最終消費者が加熱調理してから食べるのか,そのまま食べるのかを予測できる範囲内で明らかにします。

対象となる利用者が,一般的消費者なのか,あるいは病人や乳幼児等なのか,さもなくば二次加工者なのか,わかっている範囲で記述します。この情報は,製品の管理レベルに影響を及ぼすからです。特に,管理に欠陥があった場合,製品に含まれる可能性のあるアレルギー物質に敏感な人が摂食する可能性があるのかを明確にしておくことは的確なHACCPプランを作成するうえで重要なポイントになります。

 

4)フロ-ダイアグラム(製造加工工程一覧図)の作成[手順4]

危害分析を容易かつ正確に行うためには,まず危害分析に先立ち,必要な情報やデータの収集,従事者から作業状況をよく聞く必要があります。そのうえで,原材料の受け入れから最終製品の出荷に至る一連の製造や加工の工程について,流れに沿って各工程の作業内容がわかるようなフローダイアグラムを作成します。

また,施設の図面や標準作業手順書を作成しておくことは,危害分析の助けになります。

① フローダイアグラム

② 施設の図面(施設内見取り図)

さらに,コーデックス委員会の「HACCPシステム適用のためのガイドライン」には示されてはいませんが,施設内での現状でのすべての施設設備と付帯施設の平面的な配置,食品や資材等と作業員の動き,空気の流れがわかるような施設の図面を作成します。あわせて,施設の各区域を汚染レベルに従って,例えば清浄区域,非清浄区域などというように区分けします。それらのことによって,病原菌や毒性化学物質などの危害要因がどのような経路で,どこの工程で汚染(二次汚染と交差汚染)している可能性があるのか,さらには虫や異物の混入のルートなどがわかります。

ただし,このような汚染レベルによる区分けについては,必ずしも理想的な姿になっていなければHACCPシステムを始められないということなのではなくて,あくまで,現状での汚染する可能性の高い箇所を見つけ,そのための重点的な監視と対策の仕方を講じておくための基礎的な知見を得るためのものであることを理解することが重要です。そして,そのような初期の検討やHACCPシステム実施後の見直しにより,やはりハード面で対処するほうが合理的でトータルなコストも安いということになれば,施設設備を改造,増改築,あるいは新築することも選択肢の一つとなります。

フローダイアグラムの作成

1.原材料の受け入れから最終製品の出荷までの工程や作業を簡潔に列挙

2.列挙された原材料や工程を枠で囲み,枠を矢印で結び,工程順に番号をつける。原材料については,食品添加物,容器包装,使用水なども書き入れ,これらは同列に枠囲みで記載し,使用する工程まで矢印を結ぶ

3.危害の発生防止に関連する作業上のパラメータ(殺菌温度,冷却温度,pHなど)を記載

③ 標準作業手順書の作成

工程ごとに作業の担当者や部署,作業手順(内容),使用する機械器具の名称および仕様,使用する原材料,添加物および包装資材,作業の所要時間(培養,保留,保温,停滞時間を含む)などを記載した標準作業手順(SOPまたはSSOP)を文書化したマニュアルを作成します。

5)フロ-ダイアグラムを現場において確認[手順5]

HACCPチームのメンバーで操業中の施設を巡回し,詳しく観察して,手順4で作成した書類に示されている内容(工程,工程の順序,作業手順の内容,作業手順の種類,人や物の動線,機器の配置,空気の流れ,清浄区域の配置など)が現場を正しく反映したものかを確認します。実際の状況と相違点があれば,それら書類の修正を行います。

2.HACCPシステムの7原則

 HACCPシステムは、次の7つの基本原則から成り立っていて、このシステムによる食品の衛生管理の実施に当たっては、これらの原則に則った実施計画の作成とその実施が必要とされている。

 HACCPシステムは、ハザードの分析とCCPを主体とする食品安全性確保の為の管理システムであるが、ハザード分析を行いCCPを設定するだけで成り立つわけではなく、実際は各CCPについてハザードを除いたり、防いだり、減らしたりするために監視すべき事項を設定し、それが予め設定しておいた許容限界(CL)を超えないように的確にモニタリングすることが必要です。

 監視事項としては、短時間に正確な結果が得られ、連続的に監視できる事項が理想的であるが、例えば、PH、温度、時間、圧力、流量などのパラメータが揚げられる。

しかし、ISO22000では、その点に制限がない。

 また、HACCPシステムには、監視事項がCLを超えた場合に取るべき改善措置、このシステムに従った管理計画全体が効果的に機能しているかどうかの検証及びこの計画に関わる全ての記録の取り方とその保管方法も含まれる。

 ここでは、この7つの原則について簡単に触れておき、特に重要なハザード分析のハザードとは何かを次に説明します。

 


①   原則1…ハザード分析(HA;Hazard Analysis)

 ハザード分析は、それぞれの工程毎に行わなければならない。

 その目的は、HACCPプランを作成しようとする食品の原材料及び工程について、起きるおそれのあるハザードの原因物質を特定し、リスト化するとともに、それらのハザードの発生要因と発生を防止するための防止措置を明らかにすることである。

 食品衛生上のハザードとは、食品中の生物学的、化学的、物理的な因子により飲食に起因してヒトの健康被害(Harm)を起こすことである。

 列挙したハザードは、予防、排除または、許容範囲内にまで収めることができる性質のものでなければならない。

 工程毎に、特性要因図を使って検討すると良い。


②   原則2…重要管理点の設定(CCP;Critical Control Points)=ISO22000では、HACCPプランとしている。

 それぞれのハザードの原因物質について、CCPを特定すること。

 ハザード分析において特定された食品の安全性上重要なハザードであって、PP(一般的衛生管理プログラム又はPRP前提条件プログラム)でコントロールすることができないハザードについて、ハザード分析作業で集められた情報をもとに、どの工程がCCPに該当するかを特定すること。

 この場合、判断図(ディシジョン・ツリー)を使うと整理できる。先日各チームで実施したものそのものである。


 ここまでの作業で、HACCPは7割から8割が進んだことになる。


③   原則3…許容限界の設定(CL;Critical Limit)

 それぞれの特定されたCCPについて、その予防措置のための限界値を設定すること。

 CLはそれぞれのCCPにおいて、ハザードを予防、排除、または許容範囲におさめるためにコントロールされなければならない工程のパラメータの最大又は最小値であり、温度・時間・物理的な大きさ・湿度・水分活性・PH・塩分濃度・有効塩素濃度などのパラメータが一般的に使われる。

 また、CLは製造基準、科学的なデータ(文献、実験)に基づいて設定されるべき。


④   原則4…モニタリング方法の設定(Monitoring)

 モニタリングとは、CCPが設定されたCLの範囲内でコントロールされていることを確認するための観察、測定、検査である。

 連続的なモニタリングがのぞましいが、無理な場合には、CCPの管理状態が適切であることを保証できる十分な頻度で行うこと。

 それぞれのCCPにおいてモニタリング担当者を指名することが重要。その指名された従事者は、すべての結果を正確に記録できるよう必要な教育・訓練を受けるべきである。


⑤  原則 5…改措置の設定(Corrective Action)

 HACCPプランには、モニタリング結果、あるCCPにおいてCLからの逸脱が明らかになった場合の改善措置(修正や是正処置のこと)が含まれていなければならない。

 HACCPプラン作成時には、問題発生を防止するために十分考慮するが、このプランがあるからといって、問題が発生しないことを保証しているわけではない。

 このため、CLからの逸脱時に採るべき行動計画を設定しておくことは、HACCPプランの重要な部分になる。

 この場合、改善措置は安全性が損なわれている可能性がある製品に対し食品衛生上必要な処分を行うとともに、逸脱原因を特定した上で排除し、工程の管理状態を元に戻すものでなければならない。

 また、場合によっては、新たなCL又はCCPの追加設定といったHACCPシステムの修正が必要になることもある。

ISO22000規格の修正・是正処置に該当する。


⑥  原則 6…検証方法の設定(Verification)

 HACCPシステムは、ハザードの発生防止のためにHACCPシステムが正しいか、効果的に機能しているかを定期的に検証しなければならない。

 実際に行われている管理方法がHACCPプラン通りか、食品の安全性確保の目標達成のために修正及び検証が必要かどうか決定するためのモニタリング以外の検査・手続きが含まれる。


食品微生物基準諮問委員会では、次の4点が検証に含まれていることとしている。

(1)CCP及びCLが適切で、コントロールに十分であることの科学的・技術的な検証

(2)全体のHACCPシステムが適切に機能していることをプラン作成時及びその後も継続的に確認すること。

(3)HACCPシステムの定期的な見直し。

(4)行政の役割として、営業者のHACCPシステムが適切に機能していることの確認することである。


⑦   原則7…記録の維持管理(Rrcordkeeping)

 全体のHACCPシステムを効果的に記録する方法、担当者、様式などが決められ、その通り行われていなければならない。

 HACCPシステムを実施している間、継続的で、かつ信頼のおける記録が維持管理されていなければ、HACCPシステムは成り立たない。

また、それらの記録は、見直し時に使用できなければならない。

HACCPによる工程管理を行うことによる営業者や行政両方のメリットは、客観的でかつ適切な記録が得られる点である。


 以上の7つの原則が導入に当たって満たされていなければならない。

 特に、原則1は最も重要で、HACCPシステムが効果的に実施されるには、ハザードの分析を的確に十分行うことが必須条件になる。

 ハザード分析を行う際に収集された情報、データ及び分析結果が基礎になって、原則2のCCP原則3のCL、原則5の改善措置及び原則6の検証方法が設定され、これらを総括したHACCPシステムの文書(マニュアル)が作成される。また、原則4のモニタリング方法は原則3のCLが設定されれば、それに対応して設定されるものである。

 原則7の記録の維持管理も、HACCPシステム全体に関わる重要な原則。

マニュアルという形で文書化されたHACCPシステムの実施に伴い、モニタリング、改善措置、検証などの記録がとられ、これらの点検により衛生管理状態の適否が評価できるのである。

 

 上述の7原則の内、HAについては非常に重要な作業であり、この危害分析の良し悪しでHACCPシステム全体の評価が決定されてしまうと言っても過言ではない。

 そこで、「ハザード」とは何であるか、良く理解しておくことが大切です。

 すでに各チームのディスカッションでハザードの設定をしてありますが、再度、ハザードの原因物質について説明してみましょう。

1.ハザードとは


ハザードとは何か :飲食に起因する健康被害またはそのおそれ。

ハザードの原因物質:食品中に存在することによりヒトに健康被害を起こすおそれのある因子で、次の三つに分類できる。

①生物学的―食品中に含まれる病原細菌・ウィルス・寄生虫の感染またはそれらの体内で産生する毒素による健康被害などを発生させる。

②化学的―食品中に含まれる化学物質例えば農薬による疾病・麻痺または慢性毒性の健康被害を発生させる。

③物理的危害 ―食品中に含まれる異物の物理的な作用による健康被害を起こすもの。


B.C.P.の略は、Biological.Chemical.Physical.の頭文字からきています。

 もう少し具体的に説明すると、食品衛生上のハザードとして、飲食に起因する食中毒を誰もが思い浮かべると思います。数年前に日本全国で発生した病原大腸菌O-157はあまりにも有名な話です。

 従来からその多くは、サルモネラ・病原大腸菌・腸炎ビブリオ・黄色ブドウ球菌などの食中毒細菌をハザードの原因物質とする細菌性食中毒である。①に該当

 また、食品中に含まれる化学物質を原因とする食中毒もある。例えば、ふぐ毒・貝毒・きのこ毒などの食品中に天然に存在する化学物質と農畜産業で使用される殺虫剤や動物用医薬品、工場内で使用する洗剤や殺虫剤高濃度の食品添加物などの人為的に食品に添加または混入されるものがある。②に該当

 次に、金属片・ガラス片などの異物混入により、胃腸障害、歯牙の傷害などは、物理的危害の例である。③に該当

 食品の製造・加工の段階で、多くの種類および量の微生物が増殖したり、同じ状態を保ったり、減少したり、完全に死滅したりするが、たとえ十分な加熱工程により病原微生物が死滅したとしても、その他の微生物は生存し続けることもあることを知っておくことも重要。

 次に12の手順に入りますが、また12もあるのかと思われているかもしれませんが、実は7原則に五つの手順を加えただけのものです。

 

2.HACCPの12手順について

1.     専門家チームの編成…製品についての専門的な知識と技術を有する者をメンバーとするチームを編成する。

2.     製品についての記述…製品についての特性・流通条件・使用方法などの製品説明書

3.     使用についての記述…製品の意図する用途を確認。

4.     製造工程一覧図・施設の図面及び標準作業手順書の作成…フローダイアグラムと施設の図面の作成をする。原料受入から最終製品の出荷までの一連の製造工程が記載されたフローダイアグラムと施設内の見取り図を作成すること。

5.     現場確認…作成されたフローダイアグラムと施設内の見取り図について現場を確認すること。

6.     危害分析(HA)………………原則1

7.     重要管理点の設定(CCP)…原則2

8.     管理基準の設定(CL)………原則3

9.     モニタリング方法の設定………原則4

10. 改善措置の設定…………………原則5

11. 検証方法の設定…………………原則6

 12. 記録の維持管理…………………原則7

ここまでで、HACCPシステムの概要が理解できたかと思います。

ここでは、前提条件プログラム(又は一般的衛生管理プログラム)がテーマです。

1.前提条件プログラムとは何か。


 前提条件プログラムとはHACCPシステムを効果的に機能させるための前提となるプログラムである。


言い換えれば、HACCPシステムによる衛生管理の基礎として整備しておくべき衛生管理のプログラムのことで、施設・設備の構造、保守点検・衛生管理、機械器具の保守点検・精度確認・衛生管理、従業員の教育訓練、製品の回収などの衛生管理に関わる一般的事項がこれに該当する。

2.なぜ前提条件プログラムが必要とされるのか。


 HACCPシステムは、それ単独で機能するものではなく、包括的な衛生管理システムの一部であり、HACCPシステムによる衛生管理を効果的に実施するためには、その前提として食品の製造に用いる施設設備の保守点検などの一般的な衛生管理が確実に実施されることが必要である。

それらについて、その実施方法(作業内容)、実施頻度、作業担当者、実施状況の確認並びに記録の方法に関する具体的な計画文書を作成整備する。


ハザードの発生防止上極めて重要な工程管理に注意を集中させたのがHACCPシステムの概念ですので、CCPだけに注意を集中しても、衛生管理の土台となる製造環境、原材料・包装資材の保管管理、従事者の衛生管理といった部分が疎かになってしまえば、食品の安全性確保は困難になってしまう。従ってCCP管理に注意を集中できるように、製造環境からの汚染を効果的に予防することによってHACCPシステムは初期の目標を達成できるのです。

3.一般的衛生管理プログラムの対象となる事項について


1)施設の保守点検及び衛生管理

2)設備及び機械器具の保守点検及び衛生管理

3)食品等の衛生的取り扱い

4)設備及び機械器具の洗浄殺菌

5)従事者の衛生教育及び衛生管理

6)そ属・昆虫の防除

7)使用水の衛生管理

8)排水及び廃棄物の衛生管理

9)製品等の試験検査に用いる機械器具の保守点検

10)製品の回収方法


4.一般的衛生管理プログラムの内容について

アメリカの場合は、GMP(Good Manufacturing Practice)

カナダでは、PP(Prerequisite Program) 日本では、食品衛生法第19条の18に基づく管理運営基準・衛生取扱規範・企業における作業標準などに盛り込まれた衛生管理要素の体系的な文書がそれである。特に決められた様式はないが、各企業における現状の作業標準などの内容点検、見直しなどを行うとともに計画(文書)を体系的に整備することである。ISO22000では、PRPとしている。

ここまでで、お膳立てが出来たので、実際にHAリストの作成に入ります。

①HAリストの作成

HAリストは、食品の種類、製造工程、施設毎に次の手順に従って、収集された食品衛生に係る知見、データを整理して解析することにより作成する。


作業1.原材料に由来するハザードの原因物質の列挙

原材料・包装資材について、最終製品の摂取により発生するおそれのある全ての潜在的なハザード(生物学的、化学的、物理的)の原因物質を列挙する。


作業2.製造工程に由来するハザードの原因物質の列挙

フローダイアグラム・施設の図面などから、各工程において発生するおそれのあるハザードの原因物質を明らかにし、その内容を列挙する。


作業3.列挙されたハザードの評価

作業1及び2により列挙された潜在的なハザードについて、収集された疫学情報、製造現場における作業実態調査結果などを参考に、発生頻度や発生した場合の重篤性を考慮してハザードの評価を行う。

この場合、発生頻度や発生した場合の重篤性の2つの要因から、両要因とも高いもの、いずれか一方が高く一方が低いもの、両要因とも低いものの3段階に分けて評価する方法もある。この具体的な評価方法は、ISO22000では規定していない。


HACCPシステムによる衛生管理では、この危険度評価が極めて重要であり、一般的には発生頻度が高く重篤性の高い危害が対象と考えられるが、その他のハザードについても重篤性が極めて高いもの、重篤性が低くても発生頻度が極めて高いものなど特に考慮しなければならないハザードについては、出きるだけ制御の対象と考慮する必要がある。


作業4.ハザードの発生要因の特定

作業3までの作業により特定されたハザードの原因物質について、ハザードが発生するおそれのある工程毎に、ハザードがどのような要因により発生するかを考察し、特定する。


作業5.防止措置の特定

作業4で特定したハザードの発生要因を参考にして、ハザードの原因物質及びハザードが発生するおそれのある工程毎に、当該ハザードの発生の防止措置を特定する。


防止措置とは、ハザードの原因となる物質の発生予防、排除、許容されるレベル以下に収めるなどの操作・行動であり、これらの制御のための方法や条件はできるだけ具体的に示す必要がある。

また、これらの防止措置には、食品を製造している製造工程そのものの管理(加熱殺菌温度・時間)と食品を製造している環境の整備(施設設備、機械器具の保守点検、洗浄殺菌など)のHACCPの前提になるPPによる処置がある。

HAリストの書き方

工程や原料/ハザード/分類/評価/発生要因/防止措置

を表形式にすると分かりやすい。

各チームで作成したHAリストを復習してみてください。

前回のHA分析について、自分が担当しているチームの分析リストを作成しました。

まだ作ってない分野は、ここで作りましょう。これを実施していないと、次のCCPの設定で演習できません。

例えば、下のような表を作ってみることです。


関連する工程 ハザードの原因物質 分類 評価

発生要因

防止措置

殺菌工程 微生物による汚染 殺菌温度の低下 温度管理・FDVの保守点検
〇〇▽▽□□ ××〇〇 □□だから 〇×△による。

 ここまでを実施した場合は、次の手順7.…原則2「CCPの設定」に進んで下さい。


HAの結果、明らかにされたハザードの発生を防止するために、特に重点的に管理すべき工程を重要管理点(CCP)として定める。


 HACCPシステムによる衛生管理は、原材料から最終製品流通・消費に至る食品の流れの中で存在する危害因子を管理可能な工程で積極的に制御することに特徴があるので、CCPは、工程において予め設定したモニタリング方法で連続的又は相当な頻度で監視(確認)し、そのパラメーターが許容水準を逸脱した場合には、短時間のうちに改善措置を講ずることによって危害のコントロールが可能な工程とする。

 従って、製造工程そのもののコントロールではなく、製造環境の整備、洗浄、保守点検に関わる事項、製造環境からのハザードの原因物質の汚染、混入を防止するための措置などのPP/PRPによって危害因子を制御できる場合は、CCPの対象としない。

 では、具体的にCCPの決定方法を考えて見ましょう。

実際に使用してみたCCP決定判断図ディシジョン・ツリーなどがあるが、先に考え方を要約してみると、


(1)     危害分析によりリストアップした各工程における危害原因物質が、PPによって管理できる場合は、CCPの対象から外す。

(2)     危害原因物質のうち、そのいずれかを除去または許容範囲まで低減させるために、特に製造過程に導入した工程、例えば加熱殺菌工程は、CCPとする。

(3)     ある工程で生じる危害が、それ以降の工程において除去または許容範囲まで低減させることができず、結果として最終製品における目標を達成できない可能性がある場合その工程はCCPとする。


工程

危害と要因

問0

問2

問3

問4

CCP

   

左の危害はPPで解決できるか

YES:PP

NO:問1へ

   

 では、各チームで決めたCCPを思い浮かべながら、CCPの具体例に入ります。


危害の発生を予防するCCPの例

①病原菌により汚染された原材料や抗生物質の残留などのハザードは、原材料収受時のコントロールで予防できる。(例;供給者から提出される試験成績書の確認)

②化学的ハザード(添加物の過量使用)は、添加物の計量又は添加段階のコントロールで予防できる。

③最終製品中の病原菌は、添加物の計量又は添加段階のコントロールで予防できる。(例;PHの調整・酸性化・保存料の添加)

④病原菌の増殖は、冷却又は冷蔵保管の工程での温度管理によってコントロールできる。


ハザードの原因物質を排除するCCPの例

①病原菌は、加熱工程で死滅させることができる。

②金属片は、金属探知機によって検出し、金属片が混入している製品を製造ラインから排除させることができる。

③寄生虫は、適切な温度と期間の冷凍で死滅させることができる。(例;非加熱処理の食肉中のトリヒナ)


ハザードを許容水準にまで低減させるCCPの例

金属以外の異物は、原材料の成形段階での従事者による目視確認で許容範囲にまで低下させることができる。


尚、製造工程に加熱殺菌のように病原菌にとって致死的な工程が存在しない場合、またはハザードを検出し、防止するための技術が確立されていない場合、食品衛生上のハザードを許容範囲にまで低下させる工程がCCPとなることもある。

ここは、許容限界(CL)の設定について説明します。

1.       CLとは何か。                               


CLとは、ハザードを管理する上で許容できるか否かを区別するモニタリングパラメータの基準である。


2.       なぜCLを設定する必要があるのか。


CLは、確認されたハザードがCCPにおいて適切に制御されているか否かを判定するために設定される。

CCPが管理されているか、いないかを明確に判断するためには、全てのCCPに対しCLを設定しなければならない。


CLからの逸脱は、原料が製品の安全性に影響を与える可能性や製品が安全性を保証する条件下で製造されていないことを示唆している。

したがって、このことは、人の健康に対するハザードが存在(汚染、生残、残存)もしくはハザードに発展(混入、増殖、産生)してしまうことを意味します。

3.       CL設定の条件


①標的微生物などのハザードの原因物質が確実に死滅、除去または許容範囲にまで低減されていることを確認する上で最適なパラメータで、科学的根拠で立証された数値であること。


なぜなら、モニタリングにおいて、CLに適合していると判断した場合、適切な管理が行われ、ハザードの原因物質は死滅、除去または許容範囲にまで低減されていると見なされ、出荷・流通される。

このためCLの設定根拠が誤っていたり、適切でなかった場合、モニタリングでは管理状態が適切であると判断されても、実際はハザードの原因物質は、死滅、除去または許容範囲にまで低減されていないことになり、最終製品の採取によるハザードの原因となりうるからである。


②可能な限りリアルタイムで判断できるパラメータを用いた基準が一般的         例えば、官能指標(色調・光沢・臭気・ティテト・粘度・物性・泡・音など)またはAw.pHなどの化学的検査値、温度、時間などの理化学的測定値などが用いられる。


なぜなら、管理状態が適切でないことが判明した場合、速やかに改善措置を講じなければならないためである。

 許容水準としては、官能的指標(色調・光沢・臭気・ティテト・粘度・物性・泡・音など)またはAw.pHなどの化学的検査値、温度、時間などの理化学的測定値などが用いられる。また、管理基準は標的微生物などの管理する上で最適なパラメータの選択および設定と、その妥当性をも加味しなければならない。

 パラメータとしては、可能な限りリアルタイムで判断できるものがベストである。

例えば殺菌・除菌方法(加熱・濾過・紫外線・オゾン・超高圧・その他)によっても異なるが、加熱殺菌では、温度、湿度、時間、色調、粘度および物性が挙げられる。

紫外線殺菌では、流速、温度、透過率、UVランプの消耗率など。濾過除菌では、濾過圧力、透過速度、循環流速、濾過温度など。

 では、ここでCL設定の演習問題から考えて見ましょう。

加熱食肉製品の病原菌を制御する為の蒸煮工程を例にしてみます。

1.例①

ハザード:病原菌の生残

CCP:蒸煮

  CL:病原菌の不検出

これをどう見ますか。

製造工程中のCCPのためのCLとして、微生物規格を設定するのは実務的ではない。

微生物学的なCL値はモニタリングが困難で、CL逸脱を決定するための試験が数日掛かってしまうため、タイムリーにモニタリングできない。

 また、微生物汚染は、通常、散発的であり、統計学的に意味のある数値を得る為には多数の検体が必要とされる上、実務上使用できるような感度と迅速性を有する試験法は極めて稀である。

2.例②

ハザード:病原菌の生残

CCP:蒸煮

  CL:最低中心温度63℃30分以上

 食肉を汚染していると考えられる微生物の不活性に必要な条件に基づいてCLが設定されていれば、微生物学的なCL値を設定する必要はない。

すなわち、食肉の中心温度を63℃30分以上加熱することにより、危害として考慮しなければならないハザードの原因物質は死滅または許容範囲に収められることが文献上立証されているからである。

   2の方が、1よりは感度がよく、実務的と言える。

3.例③

ハザード:病原菌の生残

CCP:蒸煮

  CL:蒸煮水槽の水の温度80℃

     食肉の厚み  3mm以下

     一度に投入する食肉量:500kg

     水中での加熱時間最低60分以上

 多くの場合、製品の中心温度を連続的にモニタリングするのは難しい。

その代わりとして、製品の中心温度が必要最低温度を維持していることを保証できる製造条件をCLとして設定することも可能である。

 この場合の例は、水の温度、食肉の厚み、一度に投入する食肉量および水中での加熱時間が最終製品の中心温度に影響を与えるファクターであり、これらのファクターがCLを満たしている場合は、必ず中心温度が63℃30分をクリアーしていることを実験的に確認しなければならない。

 この例は、①②よりもモニタリングが容易であり、また連続的にモニタリング可能である。

 許容水準に対し、許容幅が認められる場合と認められない場合とがかんがえられるが、許容範囲を設定するに当たっては、許容範囲内で製造したにもかかわらず、規格外製品が製造されてしまうことがないように十分注意することも忘れてはならない。

1.ハザード分析(Hazard Analysis)

2.HACCPプランの決定(Critical Control Point)

3.許容限界の設定(Critical Limit)

4.モニタリング方法の設定(Monitoring)

5.改善措置(修正・是正処置)の設定(Corrective Action)

6.検証方法の設定(Verification)

7.記録の維持管理(Record keeping)

ここまでで、1~3の説明をしておきました。

4.許容限界に対応するモニタリング方法を設定[手順9:原則4]

ここでは、許容限界について説明しますが、モニタリングとは全てに使用できる。

① モニタリングとは何か

CCPにおける管理において,CLからの逸脱が起きたかどうかを監視することをモニタリングといいます。モニタリングによって,CCPが正しくコントロールされているかどうかを確認でき,同時に正確な記録をつけることができます。CLから逸脱した場合は,改善措置が必要となります。改善措置が必要とされる製品の範囲はモニタリングの記録を見直すことにより特定できます。

また,モニタリングの記録によって,製品がHACCPプランにしたがって製造されていたことの確認ができます。この情報はHACCPプランの検証時に役立つものです。

モニタリングとは,CCPが正しくコントロールされていることを確認するとともに,後に実施する検証時に使用できる正確な記録をつけるために,観察,測定または試験検査を行うこと。

② どのようにモニタリングを行うか

モニタリングの方法は以下の条件を満たす必要があります。

危害要因に対する管理手段が,個々の製品に対し,もれなくとられていることを確認できることが必要です。

すなわち,最初の1個から最後の1個まで,すべての製品がCLを満たしていることを監視できるように,連続的または相当の頻度で行わなければなりません。CLからの逸脱が起こったときに,できるだけ影響を最小限にし,かつ容易に改善措置を講じ得るような方法で行わなければなりません。

測定した数値を連続的に記録するだけでは危害要因をコントロールすることはできません。モニタリングに責任のある担当者が十分な頻度でチェックする必要があります。

HACCPプランを作成する際に,モニタリング担当者を定めておく必要があります。

モニタリングの記録を実際に記載するには,

1.連続的または相当の頻度であること

2.速やかに結果が得られる方法であること

モニタリング方法を決めるポイント

・何を(What) :CCPがCLの範囲で管理されていることを確認するために行う観察,

測定または試験検査

・どのように(How):迅速で正確な物理的,化学的または官能的な測定,検査

・頻度(When) :連続的または相当の頻度

・だれが(Who) :モニタリング方法について教育訓練を受けた従事者

③ モニタリングの具体例

モニタリングの例としては,次のようなものがあります。

A)原材料に由来する危害要因を防止するためのモニタリング

・検査成績書の確認(例えば,アフラトキシン含有の有無)

・漁獲海域の証明書の確認(例えば,貝毒の有無)

B)危害要因を排除するためのモニタリング

・オーブンのラインスピードと温度の測定

・加熱殺菌機のチャートの確認

・すべての製品が適切な金属探知機を通過していることの確認

C)病原菌の増殖をコントロールするためのモニタリング

・冷蔵庫内の温度測定

・原材料のpH測定

D)危害要因を許容水準まで低減させるためのモニタリング

・選別作業(硬質異物)の適切性の観察

●モニタリングの記録に記載する事項

① 記録した日時

② 製品の名称,記号(ロット名)

③ 実際の測定,観察,検査結果

④ CL

⑤ 測定,観察,検査者のサインまたはイニシャル

⑥ 記録の点検者のサインまたはイニシャル

年月日 開始時刻 開始温度 終了時刻 温度記録 サイン

5.許容限界から逸脱が認められた時の改善措置(修正・是正処置)を設定[手順10:原則5]

① 改善措置とは何か

改善措置とは,モニタリング・パラメータ(監視すべき指標・数値)がCLから逸脱した場合にとるべき措置をいう

危害要因の発生を防止するうえで,とくに厳重に管理すべき工程であるCCPでは,モニタリング・パラメータ(監視すべき指標・数値)がCLから逸脱した場合にとるべき措置をあらかじめ定めておくことが大切です。

CLからの逸脱が起こった場合に,迅速・的確に対応する措置を改善措置といいます。HACCPシステムの特徴の一つは,CLからの逸脱を迅速に発見し,影響を受けた製品を排除し,工程の管理状態を元に戻すところにあります。

したがって,HACCPプラン中には,工程の管理状態を元に戻すための措置と,影響を受けた製品の処分方法を決定し実施するための措置を規定しておかなければなりません。

② 改善措置としてHACCPプランに記載すべき事項

逸脱の間に製造された製品に対する措置として,用途を変更することも可能ですが,新たな危害要因をもち込まないように注意します。また,検査結果に基づいて保留を解除する場合には,保留ロット全体が安全であることを保証するような適切なサンプリング・プランに従った検査が必要です。

1.工程の管理状態を元に戻すための措置

・機械の修理,調整,取り替えなど,工程を正常の管理状

態に戻す

2.逸脱の間に製造された製品に対する措置

・基準に適合しない製品を識別・保留して評価する

・再処理するか廃棄するかなどの処理方法を決める

③ 改善措置実施担当者

実施担当者としては,CCP管理に関する十分な知識をもち,その工程をよく理解し,迅速な判断ができる製造現場の責任者が最適であり,実施に関しては十分な権限が与えられるべきです。

④ 改善措置実施記録

改善措置実施記録には,次の事項を含めるようにします。

・逸脱の内容,発生した製造工程または場所,発生日時

・措置の対象となった製品の名称,ロット番号,数量等

・逸脱の原因を調査した結果

・工程を元の状態に戻すための措置内容

・逸脱している間に製造された製品にする措置内容

・以上の事項の実施および記録の担当者のサイン

・改善措置内容の点検者のサインおよび点検の日付

HACCPプランの見直しまたは改訂作業が必要か否かの評価

⑤ 改善措置の具体例

・製品:小魚のフライ

・工程:フライヤーによるフライ

・モニタリング:フライヤーにセットした温度計の表示を15分ごとに測定

・逸脱内容:フライヤー中の油温がCLより低下

・改善措置:ただちに魚の投入を中止し,フライヤー中の製品を回収します。さらに15分前からそれまで製造した製品を識別して保留します。油温を再調整し,油温がCLから逸脱するかどうかを確認します。逸脱しない場合は作業を続行します。回収した半製品と15分の保留した製品は再加熱が可能か否か評価します。再加熱ができない場合,または用途変更できない場合は破棄します。

6.HACCPプランの有効性を確認するための検証方法を設定[手順11:原則6]

① 検証とは何か

検証とは,HACCPシステムがHACCPプランに従って実施されているかどうか,HACCPプランに修正が必要かどうかを判定するために行われる方法,手続き,試験検査をいう

注意深く作成され,すべての必要な事項が記載されたHACCPプランであったとしても,それだけでプランの有効性は保証されるわけではありません。検証は,HACCPプランにしたがって実際に製造を行ったうえでその有効性を評価し,HACCPシステムが適切に機能していることを確認するための手段です。

HACCPプランは,衛生管理状況や新しい情報を元に改良を加えるなどつねに発展させることが望まれます。定期的な検証の結果から,既存のHACCPプランの弱点を認識することにより,それを修正し,より優れたものにすることができます。また,企業経営者は検証によって不必要な管理や,非効率な管理を避けることができます。

自主衛生管理では,施設自らが検証を行わなければなりません。

これを「内部検証」といいISO22000規格の7.8に相当します。

当該施設関係者以外の者が第三者の立場で客観的にプラン全体について検証することを「外部検証」といいます。

なお,検証とモニタリングとは別のものであることを認識してください。すなわち,モニタリングはCCPの管理状態をチェックすることです。一方,検証は作成されたHACCPプランそのものが有効かどうかを判断するためのものです。

また,消費者からの苦情があった場合,HACCPプランやHACCPシステム全体に関わりがあるか否か見直すことも忘れないようにしましょう。

② HACCPプランごとの検証

CCPごとのHACCPプランの検証は次の事項について行います。

・モニタリングに用いる測定装置(計器)の校正(キャリブレーション)

・原材料,中間製品または最終製品の試験検査

・製造・加工条件の測定

・CCPのモニタリング記録,改善措置記録,検証記録の確認

③ HACCPシステム全体の検証

HACCPシステムの検証は,必要に応じて,および定期的に実施する。検証の結果は記録し,点検されなければなりません。

消費者からの苦情または回収原因の解析には,消費者からのあらゆるクレームについてHACCPプランの運用に関係するものか,または今まで明らかでなかったCCPが顕在化したものであるか否かを見直す必要があります。モニタリング作業の適正度の現場確

認では,モニタリングの方法は適切か,モニタリング結果はそのとき,その場で記録されているか,実際の時刻が記録されているか,担当者のサインまたは署名はあるかを確認します。

なお,最終製品の試験検査はHACCPプランだけでなく衛生管理システム全体の検証の意味も含まれます。

④ HACCPシステムの妥当性確認

次のタイミングで危害分析およびHACCPプランの各部分の裏づけとなっている理論的根拠を確認する必要があります。

・消費者からの苦情または回収原因の解析

・モニタリング作業の適正度の現場確認

・最終製品の試験検査

・最初に,および最低1年に1回

・少なくとも次の変更があったとき

□原材料の変更

□製造工程またはシステム(コンピュータとそのソフトを含む)の変更

□包装の変更

□最終製品の配送システムの変更

□最終製品の意図した使用または意図した消費者の変更

・検証の結果,HACCPプランの欠陥またはその可能性が示唆されたとき

・同一の食品または同一の食品群において新たな危害要因が判明したとき

・製品の安全性に関する新たな情報が得られたとき

⑤ 内部検証作業としてHACCPプランに規定すべき事項

検証計画に規定しておく事項は次のとおりです。

・内容

・頻度

・担当者

・検証結果に基づく措置

・検証結果の記録方法

⑥ 検証に用いる試験検査法,検体の採取方法

製品の安全性を保証するために,CCPCLが適切に設定され,管理されているかどうかを評価,確認することが含まれます。

検証のための試験検査方法は,妥当性のある方法でなければなりません。目視や官能的指標による確認も検証の手段として用いることができますが,この場合も文書化した手順や,写真や見本による客観的基準を設定しておく必要があります。

生菌数,大腸菌群,大腸菌,黄色ブドウ球菌,サルモネラ属菌などの微生物の試験法や食品添加物の定量法は,公定法がある場合はそれを用います。

公定法がない場合は「食品衛生検査指針」などに基づいて行います。より迅速な方法を用いることもできますが,その場合は前もって標準法と比較し妥当性を確認しておくことが必要です。

また,微生物検査で培養に用いる恒温器,培地の調製に用いる天秤,pHメーターなどの計測器は日常点検と定期的な校正が必要です。

恒温器の内部温度を測定する温度計は,定期的に標準温度計を用いて校正します。天秤の日常点検に用いる分銅は定期的に標準分銅で校正します。pHメーターは使用の都度,標準緩衝液で校正します。

試験検査は外部の検査機関に依頼することもできます。

なお,検体の採取方法も,原則として「食品衛生検査指針」などに準ずるものとします。

 

7.記録の文書化とその保管規定を設定[手順12:原則7]

① 記録の必要性

正確な記録を保存することはHACCPシステムのもっとも重要な特徴の一つです。工程管理がHACCPプランどおりに実施されたことの証拠は,記録のなかに存在します。記録に含まれる情報は,自主管理の貴重な証拠となるだけでなく,食品衛生監視員による監視時に,施設での衛生管理,工程管理の状態を証明するうえでの有効な資料となるものです。万が一,食品の安全性にかかわる問題が発生した場合でも,製造または衛生管理の状況をさかのぼって原因追求を容易にするとともに,製品の回収が必要な場合は,原材料,包装資材,最終製品などのロットを特定する際の助けともなります。

現場の作業に合わせた記録方法により,記録し,保存することが大切です。

② 記録および保存文書の内容

HACCPプランとそれに関連する文書として,以下のようなものがあげられます。

HACCPチームの構成と役割分担

・製品説明書

・製造工程一覧図(フローダイアグラム)

・施設内見取り図

・衛生標準作業手順書(SSOP

・危害分析(危害リスト)結果およびリスト作成時に使用した資料など

CCPおよびCL決定時の議論の経過および根拠となった資料

HACCPプラン

・文書保存規定

 

HACCPプランによる衛生管理の実施に関連する記録として,

以下のようなものがあげられます。

・モニタリング記録

・改善措置の実施記録

・検証の記録

・一般的衛生管理プログラムの実施状況の確認の記録

●SSOP記録書の一例

SSOP記録  使用水管理 No.1 日 時 担当者名 塩素濃度異常の有無

SSOP記録  従事者健康 No.2

SSOP記録  従事者衛生  手指洗浄 No.3

SSOP記録  ブレンダー洗浄 No.○ ―3 作業終了日時 担当者名 異常の有無

③ 記録と保存の仕方

記入時の注意事項は,以下のようなことです。

・結果を記録すべき作業の終了前に予測して記入しない

・記入する時期を後回しにしたり,記憶により記入したりしない

・簡単に消すことができないボールペンなど(鉛筆は不適)を用いる

・記入した記録を修正する場合は,修正液や消しゴムを用いず,

2本線で消して新たに記入するとともに,その修正に責任を

もつ者のサインを付す

記録の保存の方法および期間

・記録は製品の種類,特性などに応じた保存の期間(例えば最低1年間,ただし,賞味期限が1年を超える場合は,賞味期限を超える必要な期間)を定める

・保管は責任者を指定して,場所を決めて行う

・HACCPプランに関する文書も,記録と同様に保管する

HACCPプランに関する文書は,その内容に変更や修正など改訂があった場合は,改訂年月日および実施した者を明記しておく必要があります。

4.HACCPシステムの定期的検証による衛生管理計画の改善とそれらの維持・継続

HACCPチームは,作成したプランを確実に実施するために次のことを心がけるべきです。

A)従事者(パートタイマーを含む)に対する事前に必要な教育訓練など基本的な食品衛生教育

健康および安全に関する教育訓練

担当作業の手順および一般的衛生管理プログラムの実施手順

B)各部署,役職ごとの責任分担

役割・責任分担を明記した組織図を作成し,従事者が見やすいところに掲示しておくのもよい方法です。

C)試行期間

HACCPプランの実施にあたっては,従事者に慣れてもらうための試行期間を設けます。従事者に時間的,技術的に無理なモニタリングなどの作業を強いても,目的が達成できないばかりか,微生物汚染,異物混入などの逆効果が生じることもあります。そのためにプランの作成時から,できるだけ現場の意見を取り入れるようにすべきです。モニタリング,改善措置などの内容は,できるだけ具体的に,かつ,誤解のないよう指示します。また,わからないことは,必ず上司または責任者に報告し,指示を仰ぐ習慣をつけておくことです。

改善措置の実施担当者は,CLを逸脱した場合に,安全性が保証できない製品について,決してあいまいな根拠のまま出荷,流通させてはなりません。改善措置の内容は記録しておかなければなりません。また改善措置の内容は上位の責任者によって点検されなければなりません。

一定の試行期間を経た後,HACCPチームでプランの妥当性を評価し,必要があればプランの内容を修正してより確実に最終製品の安全性を保証できるものとします。その際,可能であれば外部のHACCPの専門家の協力を得て検討するとよいでしょう。

D)検証

HACCPチームは,プランの実施後も定期的にプラン全体の検証を行い,プランの見直しおよび更新を行い,さらにはHACCPシステム全体の見直しおよび更新を行います。また,

担当者は勝手に作業手順,モニタリング方法,改善措置内容などを変更してはなりません。問題があれば必ず責任者に報告させ,HACCPチームの承認を得たうえで変更するようにします。そして,変更の事項,理由,年月日,責任者名は記録しておきます。

E)可能であれば第三者機関による定期的な外部検証を受けることが望ましいでしょう。



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